今回は「ニュータイプの時代」という本の紹介です。
はじめに
まずはじめに、
あなたは自分の仕事に
価値があると思いますか?
「価値がないのでは・・・」
と少しでも感じている方には、
ぜひこの本をお勧めします。
2019年に発売された本で、
私自身は昨年2021年に読みました。
昨年読んだ本の中でも
最も印象深かった本です。
シンプルに言うとこの本は、
「これからの時代の社会人にとって
重視すべき行動指針や価値基準とは何か」
について語られています。
行動指針や価値基準は時代により変化しており、
2000年初頭あたりまでの価値基準で
行動するタイプを「オールドタイプ」、
ここ数年、またはこれからの価値基準で
行動するタイプを「ニュータイプ」
として説明しています。
そしてこの
オールドタイプとニュータイプの
行動指針や価値基準の違いを、
24の観点でそれぞれ述べています。
例えば「問題発見」という観点では、
以下のように対比しています。
- オールドタイプ:問題が与えれるのを待ち、正解を探す
- ニュータイプ:問題を探し、見出し、提起する
先ほど言った通り、
「2000年初頭あたりまで~」が
オールドタイプとなるので、
世の中の多くの社会人は今でも
「オールドタイプ」となります。
(私はバリバリのオールドタイプです)
しかも多くの企業や個人は、
2010年代、2020年代に入った今でも、
オールドタイプとしての古い行動指針で行動し、
古い価値基準で判断を行っています。
おかげで「変化した新しい時代環境」と
「古い価値基準で行動する企業や個人の行動」が
ちぐはぐとなり、多くの人が違和感や欠落感を
感じているのが現状です。
恐らく今までは優秀と言われ、
成果を上げていた
オールドタイプの方々の中にも、
得も言われぬ違和感や欠落感を
感じて方はいるのではないでしょうか?
この本では、
そんな違和感の原因となるトレンドや
その解消に役立つ重視すべき
行動指針や価値基準について書かれています。
この本は、こんな人におすすめです。
- 自分の仕事に価値や意味があるのか疑問に感じることがある方
- 仕事や私生活で言葉にできない謎の欠落感や違和感を感じている方
- 昔に比べて仕事がなんとなくやりにくい、またはうまくいかないと感じている方
- 仕事で自分と異なる世代の人と価値観が合わないなと感じている方
- 自分の仕事や人生における意味を探している方
最近の若い人たちは、
若い頃から変化後の社会にいるため、
元から「ニュータイプ」の気質があると
言われています。
なので「最近の若者は価値観が合わないな」
と思っている年配の方、
または逆に「年配の人の考えは古いな」
と思っている若者の方は、
この本を読むことで、
相手がなぜ自分と異なる価値観を持って
いるのか気づくきっかけになると思います。
特に年配の方は、時代の変化に合わせて
新しい価値観を理解することが
必要不可欠なので、
ぜひ読んでいただきたい一冊です。
また昔に比べて、
「仕事の意味」や「人生の意味」を
考えることが増えた方も
多いのではないでしょうか。
これは今の時代環境に一因があり、
このモヤモヤした想いを解消するヒントも
この本にはあります。
個人的な感想はまた最後に書きますが、
まずは書籍の紹介です。
人材の価値を変化させる6つトレンド
まず初めに、
ニュータイプの価値観が
生まれるきっかけとなった
ここ最近の6つのトレンドを
紹介しています。
- 飽和するモノと枯渇する意味
- 問題の希少化とコモディティ化
- クソ仕事の蔓延
- 社会のVUCA化
- スケールメリットの消失
- 寿命の伸長と事業の短命化
この中からいくつか紹介します。
飽和するモノと枯渇する意味
昨今、生活に必要なものは、
全て手に入る時代です。
昭和の3種の神器(冷蔵庫、洗濯機、テレビ)
のようなものは、どの家庭にもあります。
ゲームや動画等の娯楽でさえも
スマホやパソコンさえあれば、
無数に、かつ安価に手に入る時代になっています。
ただ、モノは充足しているはずなのに、
謎の欠落感を感じている人が多いのが、
今の時代です。
問題の希少化とコモディティ化
日本ではモノがあふれ、
生活に苦労しなくなることにより、
解決するべき「問題」自体が激減しました。
つまり「問題の希少化」です。
「あれがほしい・・・」
「あれが足りない・・・」
今まで問題が潤沢に(?)あった時代では、
その問題を解決する人材こそ価値がありました。
しかし、問題が希少化したことで、
問題を解決する人材は過剰になり、
問題解決スキルの価値は低下しています。
逆に今は、
問題を発見するスキルの価値が
増加しているというトレンドです。
クソ仕事の蔓延
表現が若干過激ですが、
個人的にはこれが一番実感します。
モノの不足も解消し、
多くの「問題」が解決した世の中で、
一体世の中の「仕事」では
何の問題を解決しているのでしょうか。
答えとして可能性が高いのは、
「世の中の仕事は何の問題も解決していない」
です。
生産性が向上した世の中では、
労働時間が減るはずなのですが、
そうはなっていません。
不思議な話です。
これはどういゆうことかというと、
多くの企業、人、組織は、
無価値で意味のない仕事をしている可能性が
あるということです。
もちろん世の中には、
医療従事者に代表される
エッセンシャルワーカーのように
必要不可欠な仕事はあります。
ただ、そうではない仕事も多く、
私自身も仕事をする上で、昔に比べて
「この仕事をして誰かが幸せに
なるのだろうか・・・」
といった疑問を持つことも少なくありません。
著者は、以下のように述べています。
目的や意味を明確化することなく、ただひたすらに生産性を求めて量的成果を追求するオールドタイプは、さらなるクソ仕事を作り出して周囲のモチベーションを破壊し、「無意味の泥沼」へと陥っていく・・・
皮肉な笑いが出そうな表現ですが、
この状況にはまっている人にとっては、
大変深刻な問題です。
多くの人が費やしている仕事の時間に、
意味が見いだせないというのは、
かなりの精神的ストレスになると思われます。
社会のVUCA化
この本では「VUCA」という言葉が
頻繁に登場します。
「VUCA」とは、
下記4ワードの頭文字を取った言葉で、
変化が激しく、環境が複雑化し
想定外ことが頻発することにより
未来の予測が難しい状態を言います。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
今の社会がまさにこの状態で、
今後この状況はさらに加速するでしょう。
社会のVUCA化が進むと、
どうなるかというと、
以下のことが起こります。
- 経験の無価値化:過去の経験に依存する機会が少なくなる。新しい環境から柔軟に学ぶことこそ価値が発生する。
- 予測の無価値化:過去のように予測をすることが不可能かつ無意味になる。今後は結果を見ながら微修正していくことが重要となる。
- 最適化の無価値化:環境は連続的に変化するため、最適化しすぎると次の環境の変化についていけない。最適化より柔軟性が重要となる。
このような社会において、今までセオリーだった、
過去の経験に頼り、綿密に分析や計画を行う、
という手法は得策ではなくなってきています。
これからは、新しいことをまずは実践し、
実践しながら微修正するという進め方の方が、
適しつつあります。
ニュータイプの考え方
続いて、6つのメガトレンドを受けて
変化したニュータイプの考え方を、
オールドタイプの考え方と対比させて
下記カテゴリごとに解説しています。
- ニュータイプの価値創造
- ニュータイプの競争戦略
- ニュータイプの思考力
- ニュータイプのワークスタイル
- ニュータイプのキャリア戦略
- ニュータイプの学習力
- ニュータイプの組織マネジメント
上記より何点か紹介します。
ニュータイプの価値創造
「問題発見」に対する姿勢として、
以下のように対比しています。
- オールドタイプ:問題が与えれるのを待ち、正解を探す
- ニュータイプ:問題を探し、見出し、提起する
メガトレンドの
「問題の希少化とコモディティ化」
にあった通り、
近年世の中の問題は希少化しています。
財の価値は需要と供給で決まるので、
「問題」自体の価値は上昇し、
逆に「問題解決」は過剰がゆえに、
価値は低下していきます。
さらに人工知能などによる追い打ちで、
人間自体の正解を出す能力の価値は、
ますます低下しています。
1965年のNASAの報告書では、
宇宙船に人間を乗せる理由として、
「軽くて安くて性能がいい」
といったニュアンスのことを
述べていました。
つまり1965年当時は、
人間も優秀なコンピューターしての価値が
あったわけですが、
今その価値は急激に低下していると言えます。
逆に現代は希少化した「問題」を
見つける能力にこそ価値があると言えます。
さらに「問題」とは一体何でしょうか。
深掘りすると「問題」とは、
「望ましい状態と現状の差分」と言えます。
この「望ましい状態」自体がわからない
という企業、個人が多いのが、現状です。
日本は過去より西洋列強国を「望ましい状態」
として、追いつくよう問題解決してきました。
今、先進国になり、
多くの問題が解決したことで、目指すべき姿、
つまり「望ましい状態」がないというのが、
日本の企業、個人の大きな課題です。
これからの時代は、
他社を見て追いつく、真似をするのではなく、
個人、企業自身が内面を
見つめ直さなければなりません。
自信を見つめなおすことで、
「自分にとって何が望ましいか」を各々探し、
意義や問題を見出す必要があります。
これは多くの人や企業にとって
過去経験したことはない
難しい時代に入ってきたと言えます。
また、「構想力」に対する姿勢として
以下のように対比しています。
- オールドタイプ:未来を予測する
- ニュータイプ:未来を構想する
サブプライムローン問題、
コロナウィルスの流行、
等果たして誰が正しく予測
していたでしょうか。
経営の予測では
「当時過去の最悪のケース」をもとに
予測を試算することがあります。
しかし「当時過去最悪のケース」
という言葉について考えてみてください。
「当時過去最悪」ということは、
その「当時」より以前には起こったことのない、
最も最悪な事態であったということです。
結局「当時過去最悪」を想定したところで、
「過去最悪」よりもさらに「最悪」なことは
起こり得る可能性があるということになります。
(もちろん最良のケースも起こり得ます)
さらに昨今、VUCA化が進む社会では、
ますます未来の予測は不可能になります。
ここで大事なことは、
「どうなるか」という予測ではなく、
「どうしたいか」という構想です。
先ほどの問題の件と同様に、
人として、社会として、
「どのような姿が望ましいか」を主体的に考え、
その姿を目指すことが重要となります。
ニュータイプの競争戦略
「意味のパワー」という観点で
以下のように対比しています。
- オールドタイプ:目標値を与え、KPIで管理する
- ニュータイプ:意味を与え、動機付ける
メガトレンドの
「クソ仕事の蔓延」にあったように、
世の中には価値を生み出さない
仕事が蔓延しています。
このような世の中で過去の基準に則り、
数値や量を目標値にして
評価するのはもはやナンセンスです。
また世の中にモノが不足していた過去は、
主に金銭やモノを褒賞として、
仕事をする人のモチベーションを
維持してきました。
ただモノがあふれ、
意味が不足している昨今では、
金銭や褒賞だけではなく、
仕事の「意味」を重視する人も
増えてきています。
特に時代の流れに敏感な若い人には顕著で、
昔のように会社での出世や昇給を
仕事のモチベーションの拠り所にすることは
難しい状況です。
会社のために数字を追ってきた年配の方の中は、
最近の若者にこのような変化を感じている人も
多いのではないでしょうか。
「最近の若者は出世欲や物欲がない・・・」
年配の方からすれば、最近の若者は、
「意欲」が無いように感じるかもしれません。
しかしそうではなく、
若者の「価値観」が変化したということであり、
今の時代に不足している「意味」を与えて、
動機付けをしてあげる方がいいのかもしれません。
また、市場の「ポジショニング」についても
以下のように対比してます。
- オールドタイプ:「役に立つ」で差別化する
- ニュータイプ:「意味がある」で差別化する
グローバル化が進む昨今では、
「役に立つ」ものは、
Googleの検索エンジンや
Amazonのネットショッピングのように、
GAFAのような一部の超大企業の
総取りとなります。
つまりほとんどの企業は
負けることになります。
ここで生き残れるのは、
一部の人に刺さるような
「意味」や「ストーリー」が
あるものです。
昨今ではインターネット環境やSNSが
普及したおかげで、個人が持つ価値観を
個人個人に届けることができるように
なっています。
これら特定の人にとって「意味がある」
ものは、ただ「役に立つ」ものよりも
代替品がなく、高額となることが多いです。
ニュータイプの思考力
「論理と直感」について、
以下のように対比しています。
- オールドタイプ:論理だけに頼り、直感を避ける
- ニュータイプ:論理と直感を状況に応じて使い分ける
昨今の予測不可能な社会では、
論理で未来や結果を予測することは
不可能となっています。
また論理による「正解」は、
誰にとっても正解である代わりに、
簡単に「正解」が手に入る今の時代では、
その「正解」を使うと
差別化を失うという結果にもなります。
「役に立つ」ものを考える際は、
「論理」が必要となりますが、
先ほど述べたように、
今の時代に重要なのは「意味がある」ものです。
この「意味がある」ものを構想するためには、
「直感」が必要となります。
また「野生の思考」という観点で、
以下のように対比しています。
- オールドタイプ:生産性を上げる
- ニュータイプ:遊びを盛り込む
今までの仕事では生産性を上げるために
「エラー」を完全に取り除くことを
目指していました。
しかしこれは正しいのでしょうか。
本書ではアリの集団の例で、
「真面目なアリだけの集団」よりも、
「間抜けなアリがいる集団」の方が、
長期的なエサの収集効率が
よかったという実験結果を
紹介しています。
これは「間抜けなアリ」が、
他のアリと道を間違えてしまうことで、
偶然的にエサへの最短ルートを見つける
ことがあるためです。
人間の社会でも偶然が生み出す力を
取り入れる会社は存在します。
代表的な会社では3Mです。
3Mでは、
「研究者は労働時間の15%を
自由な研究に使って構わない」
というルールがあります。
これはグーグルなどにも
同様に採用されている仕組みで、
これらの企業は「偶然」がもたらす価値を
理解しているがこそと言えます。
「それ役に立つの?」
この言葉をすぐ口にしてしまう人は、
一旦その言葉を飲み込んでみてはどうでしょうか。
「何かおもしろそうかも」という
視点で見守ることにより、
思わぬ結果を生み出すことが
あるかもしれません。
おわりに
他にもニュータイプの
「ワークスタイル」や「キャリア戦略」
等についても解説があります。
とてもおもしろく、紹介したいのですが、
あまりに長くなってしまうので、
今回の記事内での解説はここまでと
させていただきます。
特に「キャリア戦略」では、
・綿密に計画するよりとりあえず試す
・今の場が合わないと考える場合、無理に踏みとどまらず逃げる
等、今の時代に非常に即した
考え方を解説しているので、
興味を持った方はぜひ読んでみてください。
この本を読んで感じるのは、
以下のような時代の移り変わりです。
- 「論理の時代」から「直感の時代」への移り変わり
- 「効率の時代」から「意味の時代」への移り変わり
- 「継続の時代」から「変化の時代」への移り変わり
昔のような、
- 誰もがマニュアル通りの方法を行えばうまくいく
- 誰もが特定のものを手に入れれば幸せになる
- 誰もが人から与えられた仕事で成果を出せば評価される
というような時代は、
薄れてきたという印象です。
私自身はこのような時代の変化を
歓迎したいと思います。
過去の行動指針や価値基準で、
正解のベースとなっていたのは、
「自分」ではなく「他人」でした。
「他人」が望ましいと思う行動を
とる人こそが、評価される世の中です。
そうなると「自分」の本当の想いと、
異なる行動を取ることも多く、
心身ともに強いストレスを受けることも
多かった印象です。
それでも昔はまだよかったかもしれません。
昔はオールドタイプの方が求める
「数字」「量」「お金」で成果を出すことは、
明確に社会的価値や意味がありました。
今は「数字」や「量」や「お金」で
成果を出したとしても、
価値や意味につながらないことがあります。
「価値や意味のない」と思うものを
無意味に求められる・・・
精神的に非常につらい状況ではないでしょうか。
もちろんマニュアル通りが正解とする時代とは
別の難しさがあるとは思います。
特に今まで意味について考えず、
与えられた課題を進めてきた人にとっては、
無限にある選択肢を与えられ、
途方に暮れるような感覚になる人も
いるかもしれません。
私自身もその一人で、
昔は与えられたプロジェクトで、
与えられた課題を解決すれば、
それなりの評価を得ることができました。
ただここ数年は、自分の仕事の中で、
本当に本当に必要な仕事は、
ほんの一部なのではないかと
考えることもあります。
ただ、こんな時代だらかこそ、
「自分にとって本当に大事なもの」を
整理して考える良い機会に
なるのではないかとも思います。
そうすれば世の中の人がみな、
「自分の仕事や人生の意味」を重視し、
自分の価値観と合う場を作り、集うことで、
意味を感じない仕事が生み出す喪失感や欠落感から
解放されるのではないかなと考えたりします。
また、意味が重要視される時代では、
私の好きな音楽やアート等、
「役に立たない」が「意味がある」ものが、
重要になってくるのではないでしょうか。
(音楽やアートが好きな方すみません、
一般的な話としてです。
私自身、無駄なものだとは思っていません)
これまでの時代、数字やお金を追求することに
忙殺されていたオールドタイプの方は
多いと思います。
ただ、このようなオールドタイプの方でも、
昔は理屈なしに熱中していたこと、
本当は大好きなことが、
あるのではないでしょうか。
こんな時代ですし、たまには「役に立つか」
「数字がでるか」の呪縛から逃れ、
今一度「ただ好きだったこと」を
楽しむ人が増えるといいなと思ったりします。
それがまた何かの
新しい発見やひらめきにつながったり、
自分の本当の価値観を理解できる機会になると、
なおいいなと思います。
今回はここまでとなります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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