今回は映画「リトル・フォレスト」の紹介です。
作品情報
監督 | 森淳一 |
原作 | 五十嵐大介 |
脚本 | 森淳一 |
出演者 | 橋本愛 |
三浦貴大 | |
松岡茉優 | |
温水洋一 | |
桐島かれん | |
制作年 | 2014年(夏/秋編) 2015年(冬/春編) |
上演時間 | 111分(夏/秋編) 120分(冬/春編) |
制作国 | 日本 |
はじめに
この映画は、ここ最近、
最も繰り返し見ている映画です。
ひとことで言うと、この映画では、
静かで美しい空気感を味わえます。
映画の簡単な説明は以下の通り。
- 岩手の山奥、大自然に囲まれた「小森」という小さな集落で暮らす、一人の若い女性「いち子」の話
- 自然とともに暮らし、育てた作物や野山で採集した食材を料理するというシンプルな暮らしを描いている
- 夏、秋、冬、春の全4部作(各1時間)で、夏/秋編が前半、冬/春編が後半、と2本の映画で構成されている
なんとも地味そうです・・・
実際、派手なアクシデントなどはありません。
しかし、この映画を見ると、
とても満たされた気持ちになります。
この映画の構成は決まっていて、
ある料理や食材に関わる短いストーリーが、
5分~10分程度で、いくつも続きます。
その中で友人が訪ねてきたり、
主役の「いち子」が悩んだりといった、
小さなアクシデントが所々に、
はさまっています。
料理シーンは、ドキュメンタリー映画のような、
リアリティがあります。
その食材や料理は、
「凍み(しみ)大根」「ノビル」「あけび」等、
地味な印象のものばかりです。
(ほとんど食べたことはありません)
ただ、この映画を見ていると、
これらの料理が非常にぜいたくに感じます。
この映画がおすすめな方は以下の通り。
- 静かで美しい田舎の自然に癒されたい方
- 質素な食材を活かしたシンプルでおいしい料理に興味がある方
- きれいでやさいい空気感を持つ、BGMのような映画が好きな方
逆にこのような方にはおすすめしません。
- 明確な起承転結のあるストーリーを重視する方
- スピーディーでにぎやかな作品を鑑賞したい方
- 目が離せないようなハラハラするようなストーリーが見たい方
本当のぜいたくについて考える
この映画を見終わったあと、
「本当のぜいたくってなんだろう」
と考える人は多いと思います。
私もその一人です。
この映画では主人公の「いち子」が、
近所の山で採集した食材や育てた作物を使って、
自分の住む古い家屋でシンプルな料理を作ります。
質素ながらこれらの料理は、
めちゃめちゃおしそうに見えます。
(実際おいしいのでしょう)
私自身の話になりますが、
現在、東京都心部に住んでおり、
周辺には素晴らしい飲食店がたくさんあります。
たまに特別な日には、
少々お値段が張るような、
寿司屋やフレンチレストランに行くことも、
あったりします。
もちろんおいしいですし、
満足度も低くありません。
この映画で紹介される料理は、
これら高級レストランの料理と対極にあります。
ちなみに、
映画の舞台である「小森」の撮影地は、
岩手県、衣川の大森地区が中心となっています。
有名な観光地は聞いたことはなく、
おそらく行ったことがない人の方が、
多いのではないでしょうか。
(大森になじみのある方はすみません・・・)
静かでスローな環境で作る、
シンプルな素材のシンプルな料理。
それらを大自然の中で食べる暮らしは、
高級レストランに負けず劣らず、
とてもぜいたくに見えます。
もちろん映画なので、
美化されているのもわかります。
本当の田舎の生活は苦労が多いというのも、
よく聞く話ですしね。
それでも田舎での質素で丁寧な暮らしも、
とても魅力的だなと思わせてくれる作品です。
控えめで本質的な演技
自然の描写や役者の演技等、
細かいところの描き方が丁寧で秀逸な作品です。
主役の「いち子」は、
橋本愛が演じているのですが、
素晴らしい演技をしています。
大声で叫んだり、
派手なアクション等はありません。
おいしそうな料理を食べるシーンは多いのに、
「おいしい」というセリフすら少なく、
おいしさをかみしめるように食事をします。
「丁寧かつ静かに日々を生きる」
といった感じの演技です。
ただこの控えめな演技が、
シンプルで質素なこの映画には、
とても合っていて好感が持てます。
控えめながら、
微妙な表情や声のトーンの違いで、
「いち子」の細かい感情の機微を表現している、
橋本愛の演技はとても魅力的です。
また、随所にはさまれる自然や動物の映像も、
非常に美しいです。
この自然の映像だけでも、
一本の映像作品になりそうなくらいの、
クオリティです。
おわりに
都会で忙殺されているビジネスマンや、
旅行になかなか行けない人などには、
とてもお勧めの作品なので、
興味がありましたらぜひぜひ、
見てみてください。
心のリフレッシュにぴったりです。
この作品は、
映像が美しいだけではなく、
橋本愛のナレーションも心地がいいですし、
BGMも控えめながらかわいらしく、
雰囲気だけでも全体が素晴らしいバランスで、
まとまっています。
映画自体をBGM代わりに流している人も、
少なくないのではないと思います。
(私はその一人です)
ちなみにこの映画の原作は、
漫画家の五十嵐大介の作品で、
原作も素晴らしい作品です。
五十嵐大介は、
とても美しい絵を描き、
幻想的な作品を作る、
私の最も好きな漫画家の一人です。
「リトル・フォレスト」の他にも、
代表作の「海獣の子供」は、
アニメ映画化されたりしましたが、
個人的に好きな作品は「魔女」でしょうか。
様々登場する「魔女」と「自然」との関りが、
繊細かつ幻想的に描かれています。
五十嵐大介の漫画の詳細な紹介は、
遅かれ早かれすると思いますが、
映画の紹介はここまでとさせていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント