【映画紹介】数に溺れて~数字を数えるアート映画~

引用元:IMDb

今回は映画「数に溺れて」の紹介です。

目次

はじめに

私がこの映画を始めてみたのは10年以上前です。

公開されたのは1980年代なので、
かなり古い映画ではあります。

ブログの記事にしたい映画を考えていた際に、
強烈なインパクトを残していた映画として
この映画を思い出しました。

現在、日本国内での動画配信はなく、
残念ながらDVDの販売かレンタルでしか
見る方法はありません。
(私は今回、DVDを購入しました)

10年ぶりに見てみた感想としては、
私個人としては、やはりとても素敵な作品でした。

私個人としては」です。

これは保険とかではなく、好きな私から見ても、
明確に好き嫌いが分かれる映画なのはわかります。
(むしろ好きにならない人の方が多い気もします)

過去記事で「2001年宇宙の旅」の紹介をした際に、
「見る人を選ぶ映画」と書きましたが、
その比ではありません。

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この映画がおすすめなのは以下のような人です。

  • 映画に対して意味を求めず、感覚的なアートの観点で楽しめる方
  • 多少、ブラックで悪趣味な演出やストーリーであっても楽しめる方
  • 独創的で個性的な映画を愛する方
  • 不条理で暗めのファンタジックな世界観が好きな方

逆に以下のような人には、絶対におすすめしません。

  • ストーリーの起承転結や現実的な矛盾のなさ、意味等を重視する方
  • 鑑賞後、「楽しさ」や「爽やかさ」等のシンプルにポジティブな感情を求める方
  • スピーディーでにぎやかな作品を鑑賞したい方

どちらかというと、
アート作品という分類に近いでしょうか。

ネタバレもありますが、
引き続き映画の紹介をさせていただきます。

徹底して散りばめられたコンセプト達

ストーリーは以下の通りですが、
個人的には、知っておく必要は
あまりない気がします・・・

縄跳びをしながら少女が百個の星を数えるこのプロローグから死のゲームが数のナンバーカウントとともに始まる……。60歳のシシー・コルピッツ1(ジョーン・プローライト)は、夫のジェイク(ブライアン・プリングル)が日曜学校の教師ナンシー(ジューン・ガーネット)と浮気している現場を目撃し、酔っ払ってブリキの浴槽につかっている夫を溺死させる。彼女は34歳の娘シシー・コルピッツ2(ジュリエット・スティーヴンソン)とともに、ジェイクの溺死を事枚として宣告してほしいと検死官マジェット(バーナード・ヒル)に頼むが、彼は長年慕っていたシシー1が自分のプロポーズに応じるなら要求をのむと答える。12歳の彼の息子スマット(ジェーソン・エドワーズ)は父親に劣らずのゲーム狂いで異常なほど死に執着している変わった少年である。彼をよくかまってやるシシー2は、実り少ない結婚生活に見切りをつけ母を見習って、夫のハーディ(トレヴァー・クーパー)が海で足をつらせたときに彼を溺死させる。マジェットは、またもやシシー2に結婚と引換に偽りの死亡証明を行おうとするが、今回もうまく拒まれてしまう。シシーlには孫娘、シシー2には姪にあたるシシー・コルピッツ3(ジョエリー・リチャードソン)はボーイフレンドのベラミー(デイヴィッド・モリッセー)と結婚し、何の不満もなく妊娠するが、彼が相次ぐ死に疑惑を抱く人たちの集会に参加するようになった為、カナヅチの夫をプールで溺れさせた。またしてもマジェットはシシー3に、事故だと宣言してやると言い寄るが従ってもらえず憤慨する。やがて被害者の親戚や同情者たちによって追いつめられるようになった三人のシシーは、ボートの上でマジェットを殺害し、船に水を引き始めるのだった。

引用 ー 映画.com 数に溺れて

この映画で個性的な魅力を持つのは、
ストーリーよりも、
映画が含んでいるコンセプト達です。

具体的には、以下の3点です。

  • Number:数
  • Game:ゲーム
  • Drowning:溺死

一貫してこれらのコンセプトが、
監督の強烈で徹底した美学を反映して、
映画の中に散りばめられています。

一番わかりやすいのは「数」です。

映画を少し見進めると、
各シーンにやたら数字が出てくることに
気づきます。

しかもその数字が「1」から始まり、
少しづつ増えていきます。

そしてラストは「100」で終わります。

この数字の演出だけでも、
この監督が独特すぎる美学を持っていることが
わかります。

3人存在するシシー・コルピッツが、
それぞれ夫を溺死させるのですが、
その理由もいまいち釈然としません。

妻が夫を「溺死」させるという
コンセプトのために、
ストーリーが後付けで
存在するような印象さえあります。

その死の合間合間で登場人物は脈絡もなく、
最初から最後まで綱引き等の
様々なゲームを楽しみます。

このゲームをする理由も一切描かれていません。

ギリギリ現実でありそうなストーリーと、
現実ではありえないコンセプトの描き方が、
異世界に紛れ込んだような
何とも言えない感覚とギャップ
を引き起こし、
この映画を魅力的なものにしています。

美しく個性的なシーン

どのシーンも美しく個性的です。

舞台は田舎町なので、
全体的に牧歌的なシーンが多いですが、
部屋のインテリアや各シーンの演出には、
強いこだわりを感じます。

動物の死や、虫などを使った演出も多く、
グロテスクながら個性的なシーン作りに
一役買っています。

また音楽も絶対に無視できない要素です。

音楽を担当する「マイケル・ナイマン」は、
この作品以降に担当した「ピアノレッスン」で、
一躍有名になった方です。

「ピアノレッスン」 のメインテーマは
一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

この「数に溺れて」でも、
物悲しいながらも美しい音楽が、
映像にとても合っており、
作品をより魅力的なものにしています。

この映画で個人的に特に好きなシーンは、
ラストの船上のシーンです。

美しい音楽、花火の光、水、
死を覚悟した男、数字・・・

と、この映画の各コンセプトと演出が
綺麗に融合しており、
美しく印象深いシーンです。

おわりに

明確に好き嫌いがわかれる映画ですが、
好きな方にとっては、
たまらない作品だと思います。

興味を持った方は、
深く考えず美術館に行くような感覚で、
ぜひ感性で楽しんでください。

ちにみに原題は
「Drowning by Numbers」ですが、
邦題の「数に溺れて」も
なかなか素敵なタイトルです。

この作品の監督である
ピーター・グリーナウェイ」は、
他の作品でも、少し悪趣味でこだわりの
強い演出をする作品が多く、
この映画が気に入った方は
他の作品も気に入ると思うので、
よかったらぜひ見てみてください。

今回は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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